国際石油メジャーでは、海洋油田・ガス田の開発に使われるジャケットや海洋プラットフォーム等の修復工事の難しい個所、スプラッシゾーン及びプラットフォームの最下段の鋼構造物をプロジェクトライフ40年間、メンテナンスフリーにする為にアルミ溶射防食皮膜が工事発注者の仕様書に規定されています。現在、プラットフォーム一基当たりの溶射面積は20,000㎡程度だが、溶射単価が下がるにつれプラットフォーム全体のメンテナンスフリー化が現在進行中であります。近い将来、溶射面積は100,000㎡を超えるものと思われます。我が国の道路、鉄道、港湾等の鋼構造物の防食も同様の進展が予想されます。我が国で溶射防食皮膜の普及を阻害している最大の原因は施工時の不適切な品質管理に起因する皮膜寿命の短縮です。国際石油メジャーでは、防食溶射皮膜の防食性能及び耐久性を担保する為、工事開始前からその終了までの期間、工事の中断、不良工事のやり直し等を命令できる強い権限を持った発注側検査員を施工現場に派遣し、発注仕様書の規定を誠実に守らせています。請求書には発注側検査員作成の品質承認書(又は証明書)の添付が義務付けられています。従来塗装の慣行を打破し、溶射防食皮膜の能力を最大限引き出すためには、同様の品質管理システムが求められます。
8.2 新しい鋼基材
基材は、必要に応じて脱脂する。(例えば蒸気クリーニング・溶剤クリーニング・洗浄剤クリーニング)。
QCCP#1チェックポイント - 油およびグリス汚染 |
以下の方法により油およびグリス汚染がないことを検査する。 1. 油とグリスの汚染を除去しながら外観検査をする。目で見て汚染が全くなくなるまで脱脂を続ける。 2.「溶剤蒸発試験」または「加熱試験」を行う。 (a) 溶剤蒸発試験では、トリクロロメタンなどの残留物のない溶剤か、 油やグリスのない溶剤を、油やグリスがあると思われる場所 (例えば、窪み や裂け目の腐蝕場所、圧迫されて汚染集めやすい場所)に数滴落とすか、少しかける。油かグリスの汚染があれば「蒸発リング」ができる。 (b) 加熱試験はトーチを用いて行い、脱脂した金属を約110℃に加熱する。残留している脂やグリスの汚染は金属の表面に出てくるので目に見える。 3. 試験に合格するまで検査と脱脂(または汚染がひどい場合は、高圧水ブラストか、オープンまたはフレーム焼き)を続ける。 |
8.0 溶射工程
8.1 正しく素地調整することは、溶射作業を成功させる上で非常に重要で必要なステップです。
8.1.1 評価基準
鋼基材は以下のように調整します。
- 少なくともSSPC-SP10に規定されているニヤホワイトメタル仕上げになるようにクリーニングします。 SSPC-SP10クリーニング標準は、NACE 2クリーニング標準(1.2参照)と同等です。
- 鋭い角のある研磨材(他の研磨の形にピーニングされていない)で十分なアンカー輪郭(50~100㎛)にして溶射皮膜を機械的に貼り付けます。300㎛以上の厚さの溶射皮膜では、溶射皮膜厚さの約1/3の輪郭深さを用います。輪郭深さと溶射皮膜厚さとが適合していることを曲げ試験(C6.2による)または両方を用いて確認します。