1.1 高速アーク溶射


以下の文章は社会資本審議会道路分科会建議ー道路の老朽化対策の本格実施に関する提言「最後の警告ー今すぐ本格的なメンテナンスに舵を切れ」の抜粋です。

行動を起こす最後の機会は今! 道路先進国の米国にはもう一つ学ぶべき教訓がある。1920年代から幹線道路網を整備した米国は1980年代に入ると各地で橋や道路が壊れ使用不能になる『荒廃するアメリカ』と言われる事態に直面した。インフラ予算を削減し続けた結果である。連邦政府はその後急ピツチで予算を増やし改善に努めている。それらの改善されたインフラは、その後の米国の発展を支え続けている。

笹子トンネル事故は、今が国土を維持し、国民の生活基盤を守るために行動を起こす最後の機会であると警鐘を鳴らしている。削減が続く予算と技術者の減少が限界点を超えた後に、一斉に危機が表面化すればもはや対応は不可能となる。日本社会が置かれている状況は、1980年代の米国、危機が危険に、危険が崩壊に発展しかねないレベルまで達している。「笹子の警鐘」を確かな教訓とし、「荒廃する日本」が始まる前に、一刻も早く本格的なメンテナンス体制を構築しなければならない。そのために国は、「道路管理者に対して厳しく点検を義務化」し、「産学官の予算・人材・技術のリソースをすべて投入する総力戦の体制を構築」し、「政治、報道機関、世論の理解と支持を得る努力」を実行するよう提言する。

高速アーク溶射工法ができること

  1. 当社が開発した高速アーク溶射工法に従ってアルミを鉄構造物の表面に溶射して防錆皮膜を貼り付ける技術です。
  2. 鉄構造物の経済的観点から耐用年数60年、維持管理の分野では40年のメンテナンスフリーの期間が必要です。
  3. 防錆皮膜による耐久性能はその膜厚に比例して厚くなればなるほど良くなります。アルミニウム溶射は上記2.の要求を満たすためには膜厚は250~375µが必要です。
  4. 溶射ワイヤー口径2.4mm・膜厚300µで時間当たりの溶射面積6m2~10m2を目標としています。
  5. 膜厚375μmのアルミ溶射と封孔処理層の適切なメンテナンスが100年寿命を可能にします。寿命100年の鉄鋼製橋梁も造れます。
  6. アルミ溶射を安価で実現するには高速アーク溶射工法が適しています。
  7. この分野で、現在最も多く使われている重防食塗装 (鋼道路橋塗装標準C-5仕様) は紫外線に暴露される部分が劣化するので通常30年毎に総塗り替えが必要になるので経済的観点からも高速アーク溶射工法が優れています。
  8. 以下の文章の初期コスト等は、NETISEに高速アーク溶射工法を登録した時点(2014年)の値です。高速アーク溶射工法での初期コストは、8,738円/m2で重防食塗装の8,020円/m2に比べ幾分高いが、作業時間が短く、手離れが良いことを勘案すれば、総合した鋼構造物の初期コストは同等か安くなります。本工法の溶射皮膜の期待耐久性は100年以上であり全面的更新の必要は無いが封孔処理材は紫外線等に暴露される部分が劣化するので通常30年毎に補修が必要です。一方、従来技術の防食樹脂の耐久性は30年程度で30年毎に全面的な塗替えが必要とされます。LCCの比較では、90年後の高速アーク溶射工法の累積費用は 10,688円/m2ですが、重防食塗装では 41,686円/m2となります。

TSA アーク溶射工法

アルミ亜鉛擬似合金溶射工事

土砂圧送バージ船建造

施工地: 長崎県三浦造船所

工期: 1996 年

溶射面積:400㎡

なぜこの技術が必要なのか

鉄資源を大切に使う社会の実現


日本国内で使用され何らかの形で国内に存在している鉄は13億トンと言われています。鉄を主材料とする橋梁・建物・港湾設備・車両・船舶・機械は10年から60年でスクラップになっています。
鉄製品の平均寿命を次のように考えるとスクラップ化する鉄の量は平均寿命を30年とすれば年間4,300万トン、それを60年に伸ばすと年間2,150万トンになります。これは長寿命化に依って鉄の消費を年間2,150万トン削減できることを示唆しています。
大幅な鉄資源の消費削減がもたらす効果
2,150万トン分の新たな施設建設・鉄製品製作を削減でき、産業コスト低減に寄与します。国際競争力を強化できます。

また、鉄の生産は、トン当たり2トンの温室効果ガスを発生するので、温室効果ガス排出量を4,300万トン削減できます。 国際公約を実現でき、国際信用力の強化につながります。